当記事では『エルデンリングDLC』のネタバレがあります! ご注意ください!
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オデ、イエティ。
今回は『エルデンリングDLC』の考察をしていきます。




お題は『失地騎士』について。
失地騎士とは



ストームヴィル城やソールの城砦、ファルム・アズラなどに現れる失地騎士。彼らはかつて守っていた土地を失った騎士たちだ。故郷を失った彼らの一部は、立場上は黄金樹に与する者として戦っている。
今回はややこしい立場の上にあまり語られることのない彼ら失地騎士に焦点を当てて、しっかりと考察していきたいと思う。まず失地騎士という立場について。
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彼らの装備(失地騎士の兜以外)にはこう記述されている。
何らかの理由、あるいは咎で
故郷を失くした失地騎士たちの装備。
彼らは、いずれも一騎当千の猛者である。
だからこそ、失地してなお騎士に叙されたのだ。
このテキストからわかるように彼らは黄金樹ではなく、別の土地、別の主に仕えていた騎士たちである。そしてその強さ故に、現在は黄金樹勢力においても騎士として認められている。



彼らの得物である大剣、あるいは斧槍によると、彼らの多くは、辺境の地へと送られ、失意と共に、その地に根付いたという。とあり、強さは認められたが王都のような要地を守るためには起用されなかったようだ。
失地騎士を大まかに分けると、兜(軽装)と兜(フード)の二種類がいる。
まず兜(軽装)はストームヴィル城とソールの城砦に出現する。



兜(フード)はケイリッドの大竜餐教会、そしてファルム・アズラに出現する。



兜(フード)は竜餐祈祷による攻撃を
行ってくることから、彼らは竜餐の戦士であると考えられる。
兜(軽装)は竜飾りを冠し、兜(フード)は竜餐やファルム・アズラとの関係がある。この通り失地騎士には「竜」という共通点があり、これは彼らが仕えていた元の勢力、あるいは土地に関係していると考えられる。
ここからは失地騎士がどんな勢力に属していたのか、想像も交えながら考えていく。
ストームヴィルの失地騎士



まずはストームヴィル城について。褪せ人の多くが初めて失地騎士に出会うのは、最初の関門とも言うべきストームヴィル城。接ぎ木のゴドリックが支配するこの城で、しかし主戦力となっているのはゴドリック騎士ではなく失地騎士たちだ。彼らはどういった経緯でゴドリックに仕えているのか。
まず、ストームヴィル城はかつて「嵐の王」と呼ばれた古い王がいたことが語られている。そして嵐の王は台頭した黄金樹の王、ゴッドフレイとの一騎打ちの末に敗れている。



嵐の鷹ディーネの遺灰にはこうある。
かつて、ストームヴィルに本当の嵐のあった頃、
最後まで古き王に仕えた、猛き鷹の霊体。
ここで語られる古き王は、嵐の王の事だと考えられる。嵐の王の正体については諸説あるが、個人的にはそういう二つ名で呼ばれた、人間の王だと考えている。
ストームヴィルの失地騎士を語る上で重要なのが「嵐の王の双翼」と呼ばれた騎士たちだ。騎士インクヴァル、そしてオレグ。英雄の遺灰として大勢の褪せ人を救ってきたこの二人は、失地騎士の遺灰である。まずはオレグから見ていこう。



かつて、嵐の王の双翼として知られた一方、失地騎士となったオレグは、
祝福王に見出され、百の裏切り者を狩り、英雄として還樹を賜った。
かつて、とあるのでオレグは嵐の王の双翼であったが、王が敗れたことにより失地騎士となっていた。そこに祝福王モーゴットが声を掛けて、黄金樹勢力の騎士として叙したのだろう。モーゴットの視点での裏切り者、というのはほぼ全てのデミゴッドのことを指している。それら勢力の、名の知れた百の戦士をオレグは屠ったのだろうか。



一方でもう片翼であるインクヴァルは、祝福王の誘いを断っている。
かつて、嵐の王の双翼として知られた一方、
失地騎士となったイングヴァルは、
祝福王の誘いを断り、
王なき城を、長きにわたり守り続けた。
そして、辺境の英雄となったのだ。
インクヴァルはオレグとは違い、祝福王直々の誘いを断って、嵐の王がいなくなった後のストームヴィル城を守り続けた。つまり彼はかつての忠義のために生きて、やがて遺灰となったのだろう。
もちろんどちらの選択がより正しい、ということはない。祝福王に仕えたオレグが裏切者ということはなく、どちらも等しく英雄となったことが遺灰からわかる。
また余談にはなるが祝福王モーゴットは、失地騎士の上の立場であるのにも関わらず、二人に誘いを掛け、インクヴァルには断られたがその意志を全うさせている。彼のこうした寛容なあり様を見て、オレグが忠誠を誓ったとしてもおかしくはない。
では、これらの情報を踏まえて一連の時系列を考えてみよう。
まず、嵐の王とゴッドフレイが一騎打ちを行ってゴッドフレイが勝利する。
この戦いの後、やがてマリカによって祝福を奪われたゴッドフレイは、その配下と共に狭間を追放される。
ローデイルの王が祝福王モーゴットとなり、彼は主を失くした嵐の王の双翼へと声を掛ける。



オレグはその誘いに乗って祝福王の刃となり、破砕戦争においての裏切り者を狩った。
インクヴァルは王のいなくなったストームヴィル城を守り、死亡して英雄となった。
そしてやがて王がいないストームヴィル城に、接ぎ木のゴドリックが居座った。
こんなところだろうか。では次に、現在のストームヴィル城と失地騎士の関係を考えてみよう。
現在のストームヴィル城の主は接ぎ木のゴドリックだが、彼は王都から逃げ出してきたと語られている。
ケネス・ハイト曰く、
…そもそもゴドリックなど、君主の名に値せぬ余所者よ。
王都から、女どもに紛れて敗走し、
ラダーンに怯えきって城に引き籠り、
と言っているためゴドリックは王都から逃げ出し……
と言っているため、この時のストームヴィル城は王なき城であり、ゴドリックはその座に居座っている。
リムグレイブは黄金樹においては辺境の地であり、ゴドリックはそこに逃げ延びてきたということだ。



さて、ここで非常にややこしいのが失地騎士の立場だ。ストームヴィル城の失地騎士は大剣や斧槍に語られているような、辺境に送られ根付いた者なのか、あるいはオレグやインクヴァルのように元々ストームヴィル城を守っていた嵐の王の配下なのか……。どちらなのかわからないのである。



失地騎士たちが使う嵐の戦技は、ストームヴィルの戦技と呼ばれている。実際にその紋章は鷹を象ったもの。つまり失地騎士たちはストームヴィルと所縁のある者たちだ、と考える材料はある。しかし同時に武器にある辺境の地に送られ、という部分がリムグレイブと合致しているため、ただ単にゴドリックに付き従っている、立場の弱い騎士たちという見方もある。
NPCの城主エドガーは失地騎士の鎧を着て、失地騎士の斧槍を所持している。彼はおそらく失地騎士としてゴドリックに仕えているものと思われるが、特にゴドリックに対して不満や敵意があるようには見えない。現在のストームヴィルにおいて、失地騎士たちがどのような立場についているのかは、定かではないというのが結論である。
ソールの失地騎士
次にソールの城砦について。ソールの城砦はかつて黄金樹勢力と争い、敗北して服従した勢力だと考えられる。
ソールの宿将ニアールの武器、宿将の義足のテキストにはこう書かれている。
ソールの宿将、ニアールはその脚と引き換えに、
軍の騎士たちの助命を請い、
後に彼ら、失地の軍勢を率いることとなった。
ニアールは元々、ソールの将軍であり、戦に敗れたことで部下たちの助命を請うている。氷殻の斧という武器は
「極北の城砦、ソールからの献上品」とされており、ソールが黄金樹勢力に与していることの裏付けとなっている。
しかしソールの失地騎士たちは既に死亡してしまっているようだ。ソールに現れる失地騎士は、どれも霊体であり
ワープを繰り返しながら褪せ人を襲ってくる。



宿将ニアールの装備にはこうある。
ただ一人生き残り、霊たちを率い
とうの昔に死した主を守る。
それがニアールの、あり様であった。
ニアールは自らの脚と引き換えに部下を守り、後に失地騎士を預かったが、その彼らも死んでいった。黄金樹に与した後にどういった勢力と争い、全滅することになったのかは語られていない。



ちなみに一部の失地騎士の鎧は軽装ではなく、毛皮などを用いて耐寒が図られている。また、宿将ニアールとの繋がりもあり、共に肩に角飾りがあしらわれている。ソールの失地騎士はストームヴィルの嵐の戦技に、冷気を付与した技を使用してくる。これらは戦技として存在しないため、起源がストームヴィルにあるのかどうかは不明。
単にストームヴィルの失地騎士と差別化し、エネミーとしてバリエーションを増やすための変化と捉えることもできる。
フード付きの失地騎士



次にフード付きの失地騎士について。彼らが現れるのは大竜餐教会、そしてファルム・アズラ。どちらも竜と関係したエリアであり、そして彼らは竜餐祈祷を用いてくる。
これは個人的な印象ではあるが、フード付きの失地騎士は黄金樹に属しているようには見えない。理由としてはそれぞれが守る場所が黄金樹縁の地ではなく、先史時代。つまり黄金樹以前の支配者だった、古竜に関係していることが挙げられる。
例えばファルム・アズラの失地騎士は、そこに派遣された、あるいは侵略をするというよりは、獣人と同じようにその地を守護しているように見える。彼らは古竜に付き従う人間の戦士だったのではないだろうか。
DLCにおいて、竜餐と古竜の関係は大きく掘り下げられた。竜餐は竜王プラキドサクスが人間に与えた、飛竜を狩るための手段であり、恩賞である。



古竜の末裔である飛竜、その王ベールが竜王プラキドサクスに歯向かった罰として、ベールの一族である飛竜は竜餐の贄となった。つまり古竜のために飛竜を狩ることが竜餐の本来の形なのだ。そう考えると大竜餐教会や、ファルム・アズラを守るための騎士がいる事は何らおかしくはない。



通常の失地騎士とは違ってフードを被っている理由については、正直わからない。テキストにある通り、風除けだろうか。ケイリッドはともかく、ファルム・アズラは風がヤバそうである。このフードが付いているかどうかは、装備としての設定よりも、どういう立場の失地騎士なのかを一目で分かりやすくするためのもの、と個人的には考えている。
軽装なら黄金樹勢力のお付き。フード付きなら竜餐の戦士、という具合だ。
失地騎士の旧テキスト
次に失地騎士の装備の旧テキストについて。Ver1.0.0の失地騎士装備のテキストは、現在のテキストとは大きく異なっている。ここではそのテキストを見て、本来彼らがどういう存在だったのか、旧Verでの設定を掘り下げていく。
(文章引用元はエルデンリング 神Wiki 様より)
なおあくまで最新版のテキストではないため、旧テキストは本編の設定を語るものではない。考察に含めるべきかどうかは、個々人の考えによると思うが、ここでは興味深いので紹介していく。
まずは兜(フード)から。



騎士兜を、えんじ色の長布で覆ったもの。
茨の草紋が刺繍されている。
かつてストームヴィルは流刑地であり、
長布は咎人の、戒律の名残であるという。
汝覆い隠し、曝すことなかれ。
さもなくば呪いが忍び入ろう。



現在のテキストとは全然違う。まずそもそもフード付きの失地騎士はストームヴィル城にはいない。そしてこのテキストは流刑兵シリーズ(旧Verでは失地兵)の兜の旧テキストと同じ。
どちらもえんじ色のフードなのは、旧Verにおいて設定が同一だったからなのだろう。現在の流刑兵の兜のテキストでは、流刑地に送られた兵たちが被るもの。彼らは、顔を晒すことを許されなかった。とあり、旧テキストを省略するような内容となっている。旧テキストにおいては顔を隠すことは咎人の戒律のためだったが、現在のテキストでは風除けとされている。
次に失地騎士の鎧の旧テキスト。



戦と潮風に傷んだストームヴィル騎士の胴鎧。
竜のそれを模した右肩の捻じれ角は、
禁じられた信仰、竜餐の印である。
これも本編とは明確に設定が違う。そもそも失地騎士全体が竜餐信仰者とは思えないからだ。しかし失地騎士の肩の角飾りは、竜の角を模したものだったようだ。軽装の兜に竜飾りがあるように、失地騎士の装備は竜と関連深いデザインとなっているのだろう。
次に失地騎士の兜(軽装)、失地騎士の鎧(軽装)について。
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かつて、嵐の巣を探す者たちは、
王都を遠く離れ、ストームヴィルにたどり着いた。
騎士たちはその末裔である。
嵐の巣には竜が潜み、偉大な墓を守るという。
これは旧テキストの中で最も興味深いものだ。まず、失地騎士は元・王都騎士。そして嵐の巣という場所を探してストームヴィルにたどり着いた。旧テキストでは失地騎士は「ストームヴィル騎士」とされているため、たどり着いたストームヴィルで居着いた、と考えられる。
嵐の巣は竜が潜み、偉大な墓を守るという。
これは竜の霊廟であるファルム・アズラのことを指しているのだろう。
つまり旧版の失地騎士は黄金樹を離反してファルム・アズラを探し、ストームヴィル城にたどり着いた。これは今の失地騎士とは設定が大きく異なっている。
現在のストームヴィル城は確かにファルム・アズラとの関連性を感じさせるが、失地騎士の旧テキストでは、それを強く裏付ける内容が語られていたことになる。
最後に失地騎士の手甲、足甲。



呪い除けの意味を持つ茨の草紋が刻まれている。
これは兜にも書かれていた通りである。エルデンリングにおいて「茨」のモチーフは罪の印とされているが、この草紋の場合は呪い除け。ポジティブな意味合いを元に刻まれているようだ。さて、旧版の失地騎士と現在の失地騎士を比べてみよう。
どうだろうか。設定が大きく異なっているのが感じられると思う。テキストの変化の理由を個人的に推測すると、
ゲーム的な都合であると考えられる。
本編において失地騎士は少なくとも四か所で登場している。そのうちソール、大竜餐教会、ファルム・アズラの
失地騎士を「ストームヴィル騎士」とするのは、どう考えても無理がある。エネミーの配置の自由度を上げるためにストームヴィル騎士、という設定を削除したというのが妥当ではないだろうか。
ただし肩の角飾りやえんじ色のストール、茨の草紋など、あしらわれた装飾のルーツが知れるのは面白いと思ったので、この場で紹介させてもらった。
失地騎士の装備



では最後に失地騎士の装備について。まず失地騎士の大剣から。古い意匠が刻まれた、上質な大剣とあり、一騎当千の猛者に相応しい得物であることがわかる。細かい装飾は小さくて見えないが、後述する失地騎士の盾のような、クォータリーで分割された盾の意匠が見られる。



鞘には八つの星型と……フラ・ダ・リに近いマークが左右非対称に散りばめられている。……意味はぜんぜんわかんない!



次に失地騎士の斧槍。正統派のハルバードといった印象だが、黄色い飾りが付いていて豪華な印象も受ける。特徴的なのはうねるような鉤爪で、ここだけ波打つようになっているのには意味があるのだろう。鳥のくちばしにも見えなくはないが、もしそうならストームヴィルと関連性のあるデザインと言えるだろう。



そして一番語りたいのが失地騎士の盾だ。この盾はエルデンリングにおいて珍しく、二つの紋章が配置された「マーシャリング」が行われている。



マーシャリングというのは紋章学において2つ以上の紋章を統合したり、整理すること。マーシャリングは紋章を持つ家々が婚姻したり、戦争、侵略の結果や合意に基づく国家ないし領土の併合・分割などに際して行われる。失地騎士の盾の場合はおそらく戦争、侵略の結果だろう。
黄金樹以前の勢力が黄金樹に敗れた際に、二つの紋章をマーシャリングによって統合したと考えられる。マーシャリングにも種類があるがこの場合は、「クォータリング」という分割方法と見られる。



盾を中心から四分割して、それぞれのフィールドに紋章を記述する。統合する紋章が二つの場合、左上と右下の領域に
格上の家の紋章を示すルールとなっている。
つまりこの失地騎士の盾の場合は、えんじ色の部分が格上で、色のない部分が格下。えんじ色の部分の紋章が黄金樹勢力で、色のない部分が元々の勢力の紋章である可能性が高い。



紋章のモチーフも考察しよう。えんじ色部分はおそらく植物。尖った部分が多いことや旧テキストの内容を併せて考えると、これは呪い除けの「茨の草紋」ではないだろうか。失地騎士の兜、鎧に描かれているのも似たものを感じる。なぜ黄金樹の紋章ではなく草紋なのかは不明だが、旧テキストでの設定上は意味があったようである。



次に元々の紋章についてだが、これはストームヴィル城にある紋章を分割したものと考えられる。翼のある鷹、あるいは竜だろうか。広がる意匠はおそらく羽根か、嵐。あるいは両方をイメージしたものに見える。
旧テキストにおいては失地騎士はすべて、ストームヴィル騎士であった。そう考えると失地騎士の盾にストームヴィルの紋章が記されていることはおかしなことではない。



ちなみに失地騎士の大剣、斧槍にはある「古い意匠」という言葉が盾には存在しない。これは彼らの得物である大剣と斧槍が土地を失う前からの武器であるのに対し、失地騎士の盾だけは黄金樹勢力に敗北した後に、マーシャリングされて作られたものだから、と見ることもできるだろう。



また、宿将の軍旗に描かれているのもストームヴィルの紋章に見える。宿将、失地騎士、流刑兵。これらは全て、
ストームヴィルを由来とする騎士としてデザインされたのかもしれない。
さて、今回は非常にややこしい存在である失地騎士について考察した。二つの失地騎士でその立場は違い、片方はかつての勢力が黄金樹に敗れ、黄金樹勢力に騎士として叙された者。もう片方は先史時代の王である古竜に仕えていると考えられる、竜餐の騎士。
そしてさらに失地騎士の中でもストームヴィルが故郷の者、ソールが故郷の者、あるいは辺境に送られて悲しんでいる者……と様々な立場があって、かつ語られないのでややこしい。



とはいえ、失地騎士が好きなので考察してみたかったお題だった。また、我が導きの騎士であるインクヴァルにこの記事を捧げたい。彼がいなかったらエルデンリング初日で投げ出して、今頃記事も動画も、何も作られていないはずである。
というわけで今回はここまで。おつかれさまでした。


