当記事では『エルデンリングDLC』のネタバレがあります! ご注意ください!
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オデ、イエティ。
今回は『エルデンリングDLC』の考察をしていきます。




お題は『カッコウの騎士』について。
カッコウの騎士とは



「カッコウ」の二つ名で知られる、レアルカリア兵。彼らは他の勢力軍とはやや異なる立場を持つ。カッコウたちは魔術学院から戦争の自由を与えられ、略奪を恣とする。そしてカッコウと言えばエルデンリングでも随一のヘイトスピーチをカマしていることでも有名。
カッコウたちは嘯くだろう。
とくと見よ。お前たちの血の穢れたるを。こんなものが、まともな生命に流れるものか。
まともな人物の少ない狭間の地においても、これほどまでの悪意はなかなか見受けられない。カッコウは勢力としての掘り下げは少ないが、そのインパクトから、「見た目だけはカッコいい」などと言われがちな勢力となっている。
今回は彼らカッコウたちがどういう役割を持つ存在なのか。しっかり掘り下げていく。まずはレアルカリア兵の遺灰を見てみよう。



捨て駒となる二人の雑兵と、
兵士の組み合わせ。
カッコウの二つ名で知られるレアルカリア兵は、
魔術学院から、戦争の自由を与えられており、
略奪を恣にすることで知られた。



つまりカッコウたちは魔術学院レアルカリアによって雇われた、傭兵のような存在である。勢力としての象徴は二つ名であるカッコウ。彼らの兜にはカッコウの羽があしらわれている。
勢力軍としては珍しく、彼らはデミゴッドなどの主や将を持たない。そして魔術学院に所属しているというわけでもない。やや特殊な立ち位置の勢力となっている。では、彼らはどんな戦争に参加したのだろうか。
ここで語られている戦争というのは、カーリア王家と魔術学院との戦争のことを指している。
カッコウの大盾にはこう記されている。



学院と契約を結んだ魔術騎士たちの得物。
我らが敵は、カーリアである。



魔術学院レアルカリアはかつて、満月の女王レナラによって治められていた。しかしレナラがラダゴンに捨てられ、結びが壊れた際にレナラも心を失くしてしまった。これを好機と見た学院はその長だったレナラを幽閉し、カッコウと結託してカーリア王家との間に戦争を起こしたのである。
輝石の魔術師たちはかつてレナラの才にひれ伏していたが、レナラが弱ったことをきっかけに、実権を取り戻そうと考えた。カッコウは学院の従僕ではないため、彼らに略奪というメリットを与えることで、カーリアと戦う契約を結んだのだろう。
ただし、カーリア王家の城館前にある剣の碑によればカッコウたちはカーリア王家に敗北している。



カーリア城館防衛戦。
卑劣なるカッコウどもの屍場。
イジーによればカーリア城館前に仕掛けられた魔術の罠はカッコウを退けるためのものだったという。結果的にカッコウは勢力を弱め、レナラは幽閉されているがカーリア王家そのものも滅びていない。それからは学院と王家が延々と小競り合いを続ける、膠着状態が出来上がったのだろう。
カッコウの役割
さて、ここからはカッコウの役割について。カッコウの輝石にはこう記されている。



魔力を帯びた輝石片の塊。
カッコウの兵士たちの用いる魔術擬き。
カーリアと魔術学院レアルカリア。この両者の戦争に参加していることから勘違いしやすいが、カッコウは生粋の魔術師ではない。学院が、契約の対価としてカッコウの騎士たちに魔術を教えているという。カッコウはカーリア王家と戦うためか、あるいは力を求めてのことか、魔術を習っている。
しかしカッコウ騎士の鎧のテキストを読むに、両者の折り合いは悪そうである。



その左胸には、彼らの異名の由来となる、
覗き込むカッコウが描かれている。
我らは、決して学院の忠僕ではない。
これはその、意思表示であろう。
このテキストが示す事実として、カッコウは学院の忠僕として見られることに反発している。絵面だけ見ればカッコウは魔術学院に率いられ、カーリアと戦う兵隊である。しかしそうではないと強くアピールしている。忠僕ではない、と示しているのは何よりも学院そのものに対してだろう。



契約の対価に魔術を教えていることといい、魔術学院にはカッコウより上の立場であるという意識があったのかもしれない。両者の関係はそう良いものではなかったのだろう。
ではそもそも王家でもなく、学院の者でも、ましてや野良の魔術師でもないカッコウはどこから生えてきた勢力なのか。その答えが彼らの二つ名でもある、「覗き込むカッコウ」である。
先ほども紹介したカッコウ騎士の鎧のテキストでは、学院の忠僕ではない理由として、カッコウは覗き込むカッコウを意匠として盛り込んでいるという。つまりこのカッコウそのものが、学院ないし魔術師と彼らの関係を描いているということになる。その事実を踏まえてカッコウのサーコートを見てみよう。



サーコートには、輝石の隆盛と
それを覗き込むカッコウたちが描かれている。
輝石の魔術師にとって、
その肉体は仮初にすぎない。
カッコウだけがそれを知り、見守るのだ。
これはいったい、何のことなのか。原輝石の刃ではこう語られている。



血塗られた古い輝石の刃。
原輝石を、自らの魂とするために、
古い魔術師は、この刃で心臓を切り裂く。
そしてそのまま死んでいく。
原輝石というのは魔術師セレンのイベントにて描写されている。セレンのイベントを進行するとセレンの原輝石というアイテムを託される。セレンの原輝石にはこうある。



原輝石とは、魔術師の魂である。
その古い体が死した後に相性の良い、
新しい体に移植すれば、魔術師は再び蘇る。
その原輝石はセレン自身であり、別の肉体に移植することでセレンは新たな肉体を得ることができた。輝石の魔術師にとって、その肉体は仮初に過ぎない。その言葉の意味は原輝石こそが魔術師の本体、ということを指している。
ただし誰でも無条件で、自らの魂を原輝石にすることが可能というわけではない。原輝石の刃にはそのリスクが描かれている。
血塗られた古い輝石の刃。原輝石を、自らの魂とするために、古い魔術師は、この刃で心臓を切り裂く。そしてそのまま死んでいく。つまり大抵の場合、魔術師は原輝石を本体にすることはできなかった。本編で自らの魂を原輝石にすることに成功した、セレンの才が特別であるという可能性は高い。



この習わしは当然、失敗するにせよ成功するにせよ誰かの保護が必要である。セレンは原輝石を褪せ人へと託し、褪せ人が別の肉体に移植することで蘇った。原輝石の儀式を行う魔術師はその間、無防備になる。試行するにも成功した場合にも誰かの協力が必要不可欠なのである。



彼らのモチーフ、カッコウは輝石を、つまり輝石の魔術師を覗き込んでいる。カッコウという鳥は生者と死者の
世界を行き来できる鳥であり、メッセンジャーであった。古い時代の魔術師は原輝石を通して、生者と死者の世界を行き来しようとした。
輝石を覗き込むカッコウは、原輝石の儀式を行う魔術師の庇護者なのである。しかし残念ながら原輝石の儀式は
「古い」魔術師が行ったもの。この刃も星見の廃墟にて見つけることができる。原輝石は輝石魔術の源流に近い儀式であり、現代においてはポピュラーではない、と考えられる。
必然的にカッコウの役割も昔とは異なっており、今のカッコウは魔術師を見守る役割ではない。もはや輝石の魔術師とカッコウの関係はかつてのものではなく、忠僕ではないという意思表示程度にしか意味のないモチーフとなっているのだった。
かつて魔術学院のローブは、賢貧の宣誓と共に与えられるものだった。だが、長き生では、誰もが誓いを忘れてしまうという。長きにわたる黄金律の時代の中で、役割を失くしたカッコウもまた、歪んでいったのだろうか。



魔術学院の中には「カッコウの教会」という場所が存在する。この付近にはカッコウと見られる鳥が鳥かごに
入れられ、随所にカッコウが描かれている。しかし付近にはカッコウ勢力はいないため、かつての学院との繋がりを示すものだろうか。
これらのカッコウは目の周りが赤い。理由は不明だが、赤い蜜蠟のようなもので覆われているようにも見える。
「覗き込むカッコウ」に対する学院の悪趣味な装飾とも考えられるが、果たして。
ちなみに討論室の付近には多数のカッコウの死骸があった。ラダゴンの赤狼が待機する場所なので、カッコウたちは赤狼に撃退されたのかもしれない。あるいは魔術師たちは使い魔のようなものとして、カッコウを使役しているなども考えられる。
いずれにせよ学院、あるいは輝石の魔術師とカッコウには深い因縁があるのだろう。



さて、最後にしろがね壺のテキストなのだが、真面目に考えはしたものの、カッコウとしろがね人の間に深い因縁は見つけられなかった。しろがね人が憎くて、というほどに両者の関係を示す証拠は特にないように感じる。
しろがね人がリエーニエに生息している理由は、黄金樹勢力の息があまりかかっていない土地だからだろう。あるいは彼らのルーツが月と関係しているから、とも考えられるがそれは置いといて。しろがね人は黄金樹に祝福されない。故にリエーニエで隠れて暮らし、やがてミケラの聖樹に行くことを夢見ている。
カーリア王家とも魔術学院とも関係はなく、カッコウがしろがね人を敵視する理由は特に見受けられない。想像力を膨らませて考えるならば、かつての役割を失い、王家でも学院でもなく魔術も使えないカッコウの騎士は、勢力としては微妙な立場である。さして弱い勢力というわけでもないが主も大義名分もない。
そんな彼らにとってしろがね人は、数少ないマウントを取れる相手、なのかもしれない。だからこそ悪しざまに嘲笑していた、と捉えることもできるだろう。あるいはシンプルに、この壺を作るためにしろがね人を倒し、そのついでに嘲笑っただけだろうか。



さて、まとめよう。かつて原輝石の儀式を行っていた輝石の魔術師。彼らは無防備になる肉体を守る、護衛としてカッコウの騎士に見守られていた。しかし時が経ち、両者の立場は変わった。
学院は敵と戦う野卑な兵としてカッコウを用い、カッコウもまた欲望のままに契約した。かつて魔術師の深淵を覗き込んでいたカッコウは堕ち、誇りを失くした簒奪者の旗として掲げられているばかりだった。
というわけで今回はここまで。おつかれさまでした。


