当記事では『エルデンリング』『エルデンリング ナイトレイン』のネタバレがあります! ご注意ください!
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オデ、イエティ。
今回は『エルデンリング ナイトレイン』の考察をしていきます。




お題は『リムベルドと狭間の関係』について。
エルデンリングのおさらい



かつて黄金律が支配した狭間の地。しかしその象徴たる黄金樹は光を失って久しい。夜、来たれり。大いなる脅威である夜の王が狭間の地へ引き寄せられ、やがて夜と大雨が世界を覆っていった……。
今回はプレイヤーである夜渡りたちの戦いの場であるリムベルド。そしてかつて狭間にあった、黄金樹やそれに連なる者の現在について考察していく。なお、当動画ではゲーム本編から様々なムービーや、キャラクターのジャーナルを引用する。そのため全面的なクリア後に読むことをオススメする。それについてはご注意ください。また考察の都合上、本編エルデンリングのネタバレを含むこともご了承いただきたい。
では、本編に入りたいんだけど……その前に。ナイトレインの出来事が起こる前までの、本編のストーリーについてちょっとおさらいをしていく。






まず大前提としてナイトレインはエルデンリング本編のパラレルワールドと明言されている。狭間の地でかつて破砕戦争があった、という点からナイトレインの世界へと派生していると語られている。ナイトレインによってエルデンリングの物語の謎が明かされることはない、とはインタビューでの談。
じゃあエルデンリング本編情報込みで考察したり、本編との繋がりを考察するのは筋違いじゃないか? という意見もありそうなので、まずは考察する意義から考察していく。
ナイトレインはインタビューによれば、「そういう狭間があったのかもね」という、開発チームさんの考える狭間のIFやパラレルを盛り込んだゲームとのこと。なのでナイトレインの情報をもとに本編の謎を補完することは間違いだが、パラレルワールドとしての狭間の地を考察するために本編との繋がりを考えるのは、特におかしなことではないと考えている。



また、ナイトレインはあくまで「破砕戦争後」に分岐したパラレルワールド。なのでナイトレインまでに起こった出来事は、本編エルデンリングで紡がれた歴史を辿っている。当ブログ(チャンネル)は本編の考察をするためにナイトレインの引用をすることはないが、ナイトレインの考察をするために本編の引用は行う。そういうスタンスで記事や動画を制作していることをまずは明記しておく。
というわけでエルデンリング本編を知らない方、ストーリーを忘れた方向けにちょっとおさらいをする。



かつて女王マリカという神が生まれ、黄金樹という象徴もまた生まれた。マリカは王配であるゴッドフレイと、英雄を率いて黄金樹の敵である巨人を滅ぼした。それが巨人戦争である。マリカは戦いの終わりに、輝ける黄金樹時代の始まりを高らかに宣言した。エルデンリングを掲げ、輝ける生命の時代が始まったのがこの瞬間である。
やがて黄金樹は他の勢力との戦いを始め、その力を強めていった。そして宵眼の女王と呼ばれる神人を滅ぼした際に、マリカは「死のルーン」を封じた。死のルーンを封じたことで生命から死を奪う、黄金律が完成し、狭間全土をその支配下に治めた。人々は死ぬことがなくなり、黄金樹の祝福の下で生命を謳歌できるようになったのである。



ただし、黄金樹の最盛期は短かった。黄金樹の恵みが途絶えると、人々は黄金樹の根に還り、その栄養となる必要があった。こうした黄金樹の歪みからか、やがてマリカは自らが創った時代を終わらせようとした。王配であるゴッドフレイとその部下から祝福を奪い、狭間の外へと追放し。彼らに、後のエルデの王となることを託したのである。






マリカは影従であるマリケスが封じた、死のルーンを盗み出した。理由は語られていないが、死のルーンの一部は神人ラニのもとに渡っていることから、女王マリカは神人ラニと結託したという可能性が高い。儀式の下で死のルーンが宿った刃が生み出され、刺客たちへと渡った。こうして黒き刃の刺客は王都へ忍び寄ると、多くのデミゴッドたちの命を奪っていった。



マリカが死のルーンを求めた理由は、自らに宿るエルデンリングを破壊するためと考えられる。また、マリカの中にはその半身でありマリカを乗っ取ろうとする別人格、ラダゴンが存在した。マリカは自らの中にあるエルデンリングを砕くことで、ラダゴンを道ずれにしようとしたと考えられる。
マリカがエルデンリングを砕くと、その破片は大ルーンとなってデミゴッドへと宿った。そしてマリカは自らの子であるデミゴッドたちへ、こう言霊を送っている。
デミゴッド、我が愛し子たちよ。
お前たちはもう、何者にもなれる。
王であれ、神であれ。
そして、何者にもなれぬ時、
お前たちは見棄てられる。
…そして贄となるのだ。
エルデンリングの破壊を切っ掛けに、デミゴッドたちが大ルーンを奪い合う、破砕戦争が勃発した。……というのがナイトレインまでに起きた狭間の地の時系列である。
もちろんあくまで個人的な考察ではあるが、記事の内容に関わるためおさらいさせてもらった。
では、次はナイトレインの舞台であるリムベルドについて掘り下げていく。
リムベルドとは



まずはナイトレインのOPを見てみよう。
遠い昔、狭間の地に破砕戦争が起きた。
世界は、どうしようもなく壊れてしまった。
やがて大いなる脅威が呼び寄せられる。
夜、来たれり。
大雨は地を抉り、あまねく歴史を擦り減らす。
夜の王が歩みを止めることはなく。
黄金の地は、かつての姿を失っていた。
だが、それに抗う者たちがいた。
夜渡りの戦士だ。
寄せ集めに過ぎず、全てが異なる。
生まれも、時代も、戦う意味も。
ただ一つ、等しいことは。
果てなき夜を渡り、戦い続けるのだ。
己の存在が擦り切れる、その時まで。
…世界に帳が下りようとしている。
というのがレディから聞かされた現在の状況である。本編では破砕戦争の後、褪せ人が帰還してエルデの王を目指す物語が展開された。一方でナイトレインでは破砕戦争後、夜の王と呼ばれる災いが現れ、狭間の地を覆っていった。
黄金樹が光をなくし、エルデの王が生まれる余地がないために、褪せ人は現れなかった。そして今の状況が生まれたのではないだろうか。



なお、執行者の追憶によれば、かつての黄金樹を見たことがあるのは執行者のみである。守護者は黄金樹について、
執行者と雑談をしている。
狭間の地には、かつて黄金樹と呼ばれる
巨木があったらしい。
壮大で、彼の地を祝福する象徴だったそうだ。
しかし、我々の向かう地に大樹の姿はない。
果たして夜を退ければ、
見ることが叶うものだろうか…。
こうした会話から推測するに、リムベルドには黄金樹は存在していないのだろう。ゲーム中、各地の祝福は夜に包まれ、その光を霞ませている。夜の王の侵攻によって、黄金樹はその光を失っているものと捉えられる。
「夜」というのはいわゆる日没ではなく、事象のことである。円卓の巫女であるレディは、こう語っている。
夜の王は、災害だ。
私たちが居るこの地を容赦なく荒らしていく。
誰かが止めなければ、滅ぶ。
無かったことにされるのだ。



夜の王の意図は不明だが、狭間の地は夜の王という災害によって滅ぼされつつある。夜渡りたちはそれを止めるために、円卓へ集っている。召使いはこう語っている。
夜は今、英雄サマたちの戦場…
狭間の地を支配しています。
日が落ちれば、その力はますます
牙を剝くでしょう。
どうか、雨にはご注意ください。
OPでも語られた通り、時間経過によって大雨が降り、夜の範囲が広がっていく。夜とは事象ではあるが、時間経過によって夜の時間帯になることでよりその力は強まるようだ。大雨は人の命を奪う力と、地を抉る力を持っている。リムベルドはおそらく、この大雨によって刻一刻と変化する、狭間の辺境の地だと考えられる。



エルデンリング本編の始まりの地は「リムグレイブ」だった。「リム」は地名を指す場合は地形の端、縁を示す言葉。「グレイブ」は墓。つまり、直訳すると「辺境の墓地」ということになる。ちなみにリムグレイブの始まり、漂流墓地には「辺境の英雄墓」というダンジョンがある。死が集まる狭間の地は墓も多く、辺境の墓地、という地名はピッタリだろう。
次にナイトレインの舞台である、リムベルドの地名の意味を考えてみよう。「ベルド」は地域を指すbeltや、オランダ語で草原を指す「veld」から来ていると考えられる。
つまり「リムベルド」は辺境の地域、あるいは辺境の草原という意味。リムグレイブとリムベルド、二つの土地はよく似た名づけとなっている。また、マップとして見てもいくつかの共通点を見つけられる。



実際にリムベルドのマップを切り出すと、リムグレイブとだいたい重なるようになっている。実際のロケーションにも似通った箇所が多々ある。分かりやすい場所で言えば聖人橋など。



あとは本編では大きく育っている小黄金樹。ハイド砦の前の森にあるのだが……リムベルドにおいては枯れてしまっている。こうした相似点が多いことを考えれば、リムベルドはリムグレイブの成れの果てと見てもいいのかもしれない。
ただしリムベルドは洋上にあり、地続きのはずの他の狭間の地域が見えなくなっている。パラレルワールドということを考えれば、リムグレイブと似ているだけのまったく違う土地か。あるいはリムグレイブを下敷きとした土地が、まったく別の空間に存在しているだけとも捉えられる。
次にリムベルドの変化について。
リムベルドの変化



夜渡りたちは標的となる夜の王を定めてから、リムベルドへと出立する。出発時の空は、標的となる夜の王に応じて変わっている。例えばエデレなら紫色の雷雲。リブラなら不穏な暗雲……というふうに。通常のリムベルド上にはいないが、それぞれの夜の王の影響を受けているのだろう。
なお、一部の王はランダムイベントとして現れ、夜渡りと対峙することもある。



また、夜の王との戦闘が近づくにつれ、リムベルドの外にも変化が現れる。リムベルドは一夜目→二夜目→と変化していき、二夜目になると海の向こうに薄ぼんやりとした、巨人のような姿が見えるようになる。巨人はかなりの数存在し、北からリムベルドを避け、南進しているように見える。



この巨人は二日目の雨の範囲が広がるにつれ、輪郭がしっかりとした実体に近づいていく。また、二日目からは南の海に白く輝く塔が現れる。巨人たちはその塔へ向かっているようだ。



二夜目になると二夜目のボス戦後、霊樹と呼ばれる異空間へと招かれる。そしてその中には通路と、扉が存在する。
この霊樹の空間は本編の神授塔に酷似している。夜を超えた者だけが入れるため、夜渡りや円卓にとってはポジティブな場所と解釈できる。
では、次にリムベルドに起きる大幅な変化、「地変」について。
地変はリムベルドに大きな変化をもたらし、特殊なエリアを形成する。環境ごとに有用な効果をもたらし、幾つかの種類がある。地変はゲーム的に言えばローグライクの味変。また、特殊な恩寵を得ることは攻略の手助けをしてくれる。地変は四種類。



まずは火口。神事であった鍛冶術を奉っていた、古い神殿が露わになっている。



次に山嶺。原初の山とされており、冷気を支配する竜が君臨している。



次が腐れ森。外なる神、腐敗の神性によって変異した森であり、蔓延した朱い腐敗があらゆるものを腐らせる。
しかし残された者たちが腐敗を癒す恩寵を探すための灯台を築いており、これを活用できる。



最後に隠れ都ノクラテオ。一夜にして壊滅した隠された都。地下に封じられていたが、地表へ姿を現した。
この四種類の地変がリムベルドを変貌させる。地変に共通した要素を取り上げるなら、狭間で古い時代にあった環境や、文化が遺っていること。



火口はかつて鍛冶術を奉っていた。トロルハンマーのテキストにはこうある。
トロルたちは巨人の末裔であり、
これは古い祭具、鍛冶道具であるという。
古では、鍛冶とは神事であった。
つまり火による鍛冶が最も盛んだった、巨人の時代の名残と見られる。
次に山嶺だが、こちらは原初の山とされており、冷気を操る竜が棲んでいる。本編において巨人の山嶺には、凍てつく霧と呼ばれたボレアリスが存在した。



ボレアリスの氷霧にはこうある。
太古、山嶺の主であった氷竜は、
火の巨人たちに敗れ、頂を追われたという。
火の巨人の時代よりも前に、山嶺を氷竜が支配する時代があった。地変の山嶺はその時代を表しているのではないだろうか。
次に腐敗の神性の影響を受けた腐れ森。ここは朱い腐敗が充満しているが、本編の狭間の歴史の中では、腐敗の神性を人々が信仰した時代があった。キノコの王冠にはこうある。



かつて朱い腐敗に仕えた、偉大なる王たち。
これはその王冠であろう。
かつての王朝には朱い腐敗への信仰があり、本編においては地下で確認することができる。また、腐敗の女神の素質を持つ神人、マレニアの影響によって本編のケイリッドは腐敗している。腐れ森はケイリッドと似たような状況になっていると考えられる。腐れ森に残る者たちは腐敗に火の灯台で対抗しており、ケイリッドに残る赤獅子軍を彷彿とさせる。



最後に隠れ都ノクラテオ。この名前は永遠の都ノクローンや、ノクステラとよく似ている。ノクラテオ、という名前について考えてみよう。とりあえず二通り考えられる。
一つはラテン語の「ノクス」で夜、同じくラテン語の「ラテオ」で隠れる。直訳すると夜に隠れる……。
そのままだが、隠れ都という言葉には相応しい。
二つ目は「ノクス」で夜、ギリシャ語の「テオ」で夜の神。それっぽいが、こちらになると途中の「ラ」の意味がわからないため、夜に隠れる、でノクラテオ。の方が個人的にはしっくりくる。
ちなみにノクローンはノクス+クローンで「夜の小枝」。ノクステラはノクス+ステラで「夜の星」だろうか。ノクラテオは他の永遠の都と似た文化のため、名づけも同じ法則だと考えられる。



永遠の都に共通する夜という単語からはナイトレインとの繋がりが考えられるものの、あくまでナイトレインはパラレルワールド。永遠の都が示す夜の王と、ナイトレインの夜の王は別の存在なのだろう。でなければナイトレインの夜の王の描写が本編で語られていない謎を補完してしまうため、インタビューと食い違ってしまうことになる。



ともあれ、隠れ都ノクラテオは過去の狭間にあり、夜による地変が起きたことで地上に表れた。ノクラテオは一夜で壊滅し、隠されたという。本編の永遠の都は悪意ある流星とされた、アステールによって地下に滅ぼされている。本編の永遠の都とノクラテオは、歴史から消えた理由が酷似しているようだ。
では、隠れ都ノクラテオとはかつて滅びた永遠の都と関係があるのか? ちょっと考えてみよう。
狭間の地下にある名もなき都は、かつて破壊された永遠の都の跡。名もなき都は位置的にはローデイルの直下にある。



この名もなき都に、ノクラテオを回転させて雑編集で乗っけるとこんな感じ。地形としてはまあまあ合っていると思う。



ノクラテオは地上のローデイルとも形は似ているが、そもそも都市なので特段おかしなことではなく。建築様式も全く違うので、ローデイルとノクラテオにはあまり関係性が見られない。



では、地形以外の点から名もなき都との関連性を探してみよう。霊廟兵やバジリスクなど、ノクラテオに現れるエネミーは名もなき都のエネミーと共通している。そして一番大きな点として、ノクステラの最奥にはアステールがいるため、やはりアステールに滅ぼされたのではないだろうか。
こうした情報を総合すると、かつて滅びた永遠の都という文明を、そのまま地上に再現するとこんな感じだったのかも? という仄めかし、あるいはちょっとしたファンサービスくらいに感じる。あくまでナイトレインはパラレルワールド。名もなき都のかつての姿を想像するなら、くらいの曖昧な繋がりとして見るのが妥当だろう。
これまで語った通り、地変はどれも過去の狭間に起きた出来事を、まるで再演しているようでもある。リムグレイブが夜の雨に打たれ削れ、黄金樹時代の面影が消えていったことで、狭間の地に封じられていた、過去の環境が露わになった、と考えるのは愉快かもしれない。
ちなみにこの4つの地変と、それに関係する時代については、「狭間の歴史」という動画で深く掘り下げているので良かったらぜひ。ナイトレインの情報をもとに本編を掘り下げることはできないけど、幾つかの符号があるのは確かなので、見るともしかしたらなんか楽しいかも。ガッツリ宣伝でした。
では、次に黄金樹の現在について掘り下げていく。
黄金樹の現在
先ほど語った通り、リムベルドには黄金樹はなく。姿も見えることはない。しかし黄金樹の力である「祝福」は、
今でも機能していると考えられる。祝福について掘り下げることで黄金樹の現在についても多少は答えが見いだせるのではないか。



その前に、祝福と大きな関係がある円卓について軽く触れておこう。円卓は夜の王に抗する、夜渡りたちの拠点である。円卓には「姿なき主」と呼ばれる指導者、あるいは創設者が存在し、夜の王を倒すという指針を、円卓の巫女であるレディを通して伝えている。
円卓は隠された地であるといい、荒れ果ててはいるものの安全は保障されている。夜渡りたちは円卓を活動拠点とし、
夜の王と戦うためにリムベルドへと向かうのである。



円卓と言えば、エルデンリング本編でも褪せ人の活動拠点として登場している。ナイトレインの円卓とは似通った部分もある一方で、建物としては大きく異なっている。
ナイトレインの円卓は海上の島にあり、リムベルドのある狭間とは地続きのように見える。ジャーナルの一部では、夜渡り以外の来訪者も現れている。あくまで夜の王を防ぐための拠点であり、それ以外の者は素通りできるのかもしれない。
円卓には本編の円卓と似たような、黄金樹にまつわる品々が散見される。例えばゴッドフレイやラダゴンの肖像画、黄金樹の絵画など。本編の円卓もルーツを辿れば王都ローデイルにあるため、黄金樹にまつわる意匠が多く見られた。そうした共通点から考えれば、円卓は黄金樹にまつわる者が創り出した可能性が高い。



ナイトレインと本編、二つ円卓にまたがる重要なものとしては、大祝福が挙げられる。大祝福は円卓の中央に輝いており、おそらくは黄金樹にもたらされる祝福である。ナイトレインの円卓では祝福は夜の王の撃破状況によってやや色を変え、ストーリー後半になると、夜の色が混じり始める。円卓が夜に侵食されないのは、大祝福の力によって抗っているからと考えられる。
執行者の追憶では、その祝福が弱まったことをレディに告げられる。
…見てのとおりだ。
光はまもなく消える。
そうなれば終わりだ。
終わり、というのは円卓の終わり。夜渡りたちの敗北を意味する。OPにある通り、世界に帳が下りようとしているのだ。しかしそれに対抗し、祝福を取り戻す方法も存在している。レディはこう語っている。
祝福を補わなければならない。
貴方の記憶の出番だ。
…声を聞いた。
黄金の種子は芽吹いている。
誰も寄りつかない、
極寒の、険しき地で。貴方を呼んでいる。



黄金の種子というのは、黄金樹から生まれた種子のこと。この種子が育ったことで、本編では各地に小黄金樹が芽吹いている。しかし夜に支配されたリムベルドでは、小黄金樹を見ることはまずない。
執行者は黄金樹に憧れ、かつての狭間を知る唯一の者である。だからこそ執行者ならば黄金樹の種子を見つけられ、
その趣旨の力で祝福を取り戻せる、とレディは考えたのだろう。黄金の萌芽にはこうある。



あたたかな祝福を宿した黄金の種子。
険しい雪嶺の中で見つけたもの。
実際に執行者が黄金の萌芽を見つけてくると、祝福は復活している。黄金の萌芽によって祝福を補うことに成功したのだ。本編での祝福は褪せ人を復活させ、エルデ王になる道を指し示す導きだった。ナイトレインにおいては、夜の王という災害に抗う最後の手段なのだろう。



夜渡りたちを一度だけ復活させるアイテム、さまよう祝福にはこう記されている。
夜の干渉により、留まることを
忘れた祝福の余光。
世界が擦り減り、その役目を忘却しようと。
光は導く者を求め続ける。
そして、失われた祝福はまた、もたらされる。
各地の祝福は本来、エルデの王を目指す褪せ人を導くものだった。しかし夜の干渉に遭い、祝福は留まらず導くべき者を探してさまようことになった。最後の文言は本編OPと同じもの。
…そして、失われた祝福はまた、
もたらされる。まだ名も無き、褪せ人の元に。
導くべき褪せ人のいない祝福は、夜渡りたちに宿ることになった。全く違う立場にありながら、褪せ人と夜渡りは同じように祝福を得て戦い続ける存在。これはなかなかに熱いフレーバーテキストではないだろうか。
そして宿っているのが褪せ人ではなく夜渡りというだけで、確かに黄金樹の祝福は生きている。つまり黄金樹もまた、見えないだけで現存していると考えることができるだろう。



しかし、逆に言えばエルデンリングが砕けた後、誰も修復することができず。黄金樹に連なるデミゴッドたちもまた、
悲惨な末路を遂げていると言えるのかもしれない。
最後に、ナイトレインに登場するデミゴッドについて。
デミゴッドの末路
ナイトレインの出来事はデミゴッド同士の争い、破砕戦争の後に起きている。では、彼ら黄金樹のデミゴッドたちはナイトレインではどうなっているのだろうか。



本来の黄金樹勢力で、高い位にあったデミゴッドは二人登場している。一人が接ぎ木の君主ゴドリック。ゴドリックは本編のリムグレイブを治めるデミゴッドで、神の血の薄い者だった。それ故に力を求めた結果、生物のパーツを自らに接ぐ、接ぎ木の儀式に手を出している。
ナイトレインでは一夜目に登場する。名前はなく接ぎ木の君主とだけあるが、間違いなくゴドリック本人だろう。彼はHPが半分を切ると、体に坩堝の諸相を芽生えさせて攻撃してくる。坩堝の諸相・尾や、角など。
どれも本編の坩堝の騎士が用いるもの。彼がこうした坩堝の力を用いることには背景がある。
儀仗の直剣にはこう記されている。



黄金の一族の末裔たちは、
没落の後、古きに力と縁を求めたのだ。
この古き力というのは、原初の黄金樹時代に人々に芽生えていた坩堝の諸相のこと。ゴドリックはその原初の黄金樹時代に対しての憧れがあり、それ故に間違った方法として、坩堝を接ぎ木という儀式で再現しようとしたと考えられる。
本編でゴドリックは腕を切り落とし、竜の頭を接いでいるが、これは彼の歪んだ狂気によるもの。ナイトレインのゴドリックは、坩堝の諸相を発生させている。これは本来の彼にはなかったもの。つまり、夜に飲まれて得た能力ということだろう。夜の欠片にはこうある。



夜とは、無限の広がりと可能性を持つ。
万物に平等に訪れる契機であり、
恐れるも乗じるも、接し方如何といえる。
ゴドリックは自らの願望を、夜の中で叶えたのではないだろうか。



次に二人目のデミゴッド、マルギットについて。忌み鬼マルギットは、本編においてストームヴィル城の入り口で対敵する。その正体は祝福王モーゴットと呼ばれる、正真正銘のデミゴッドである。神が不在となった王都を守り、エルデ王を目指す褪せ人を阻む忌み鬼。



そんな彼はナイトレインにおいてはチュートリアルから登場している。
見つけたぞ、略奪者よ。
お前たちがどこまでも傲慢なら、
この手ですべて撥ね除けてくれよう。
本編と同じく容赦のない初心者狩り。もとい、迎撃を行ってくる。また、リムベルドでの探索中もマルギットは唐突に現れることがある。
逃がさんぞ…。
黄金の地を荒らす、不届き者め…。
リムベルドを探索する夜渡りたちへと、苛烈に襲い掛かってくる。ただしよくよく考えれば、夜渡りたちはマルギットの敵ではないはずである。夜渡りと円卓の望みは夜の王を倒し、狭間の地を災厄から救うこと。これは本来であればマルギットと同じ目的だ。ではなぜマルギットは夜渡りと敵対するのか。
その理由はチュートリアルで彼を撃破することで判明するようになっている。
遺物、忌み鬼の呪物にはこうある。



黄金の魔力を帯びた呪物。
忌み子と呼ばれる呪われた者たち。
そのただ一人を、特に厳重に拘束するもの。
かつての魔力は失われており、
べっとりと暗い染みが張り付いている。
黄金の守人は、この地を護り続ける。
夜に飲まれてなお。
夜の敵として現れる時点で察せられることではあったが、マルギットもまた、夜に飲まれている。夜に飲まれた結果、夜の邪魔をする夜渡りたちを敵として認識しているのだろう。本来であれば彼が夜と戦う立場にあったはずだ。あるいは、戦った結果なのだろうか。
忌み王の追憶にはこう記されている。



祝福なき忌み子として生まれ落ちてなお、
モーゴットは、黄金樹の守人であろうとした。
愛されたから、愛したのではない。
彼はただ愛したのだ。
王家に生まれながら幽閉された彼は、黄金樹の地を守り続けた。王を名乗らず、忌み鬼マルギットとして、破砕戦争の折から報われぬ戦いを繰り返した。その末路が夜に支配され、機械的に夜の敵と戦い続けるものというのは残酷な結末である。
またナイトレインでのマルギットは、彼の兄弟であるモーグのように血の刃を使用する。本来のマルギットは忌み子である自らの血を嫌い、封じていたほどだった。そんな彼が血の刃を使うようになったのは、夜に飲まれて変わってしまったからなのかもしれない。
黄金樹の神やその血筋は、大方すでに夜に飲まれてしまったと捉えられる。円卓を創った者は王家とはまた別で、かつ黄金樹に連なる者なのだろう。というわけで、長くなったのでまとめよう。
狭間の地に侵攻し、大地と命を削りゆく夜。それを押しとどめるために、夜渡りたちはリムベルドへと迎撃に出る。リムベルドとは、かつてのリムグレイブとよく似た場所。その大地は大雨で穿たれ、様々な異変と夜の影響で歪んでしまっている。
すでに黄金樹の姿は狭間から消えており、ただその祝福のみが円卓と、夜渡りたちのよすがとなっている。黄金樹の神の血を引く者たちさえも夜に飲み込まれ、もはや狭間の地を救うことができるのは、八人の夜渡りだけなのだろう。
というわけで今回はここまで。おつかれさまでした。


