当記事では『エルデンリングDLC』のネタバレがあります! ご注意ください!
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オデ、イエティ。
今回は『エルデンリングDLC』の考察をしていきます。
お題は『坩堝の騎士』について。
ちなみに当記事は過去のブログ記事にDLC後の情報を加筆修正したものになります。
坩堝とは
古くは神聖視された、生命の坩堝を宿す坩堝の騎士。かつて最初の王ゴッドフレイに仕えた彼らだが、坩堝が秩序無きものと蔑まれるようになったことで、その居場所を失ってしまった。彼ら坩堝の騎士とはどういう存在なのか。DLCで得られた情報を踏まえつつ掘り下げていこう。
まず「坩堝」について。坩堝というのは生命の原初、あらゆる生命が混じり合っていた様子のことを指している。
様々な生命、様々な種の特徴。角、鱗、羽、翼、針、喉袋、尾、舌、花……。
そうした生命の特徴を、先祖返りという形で身に生じさせることを指して「坩堝の諸相」と呼ぶ。坩堝の騎士が戦闘中に行う特殊な攻撃は、この坩堝の諸相を利用した技となっている。坩堝は黄金樹の原初たる生命の力だとされ、古い時代には神聖視されていた。
これは奇しくも黄金樹勢力と敵対する、角人の文化においても同じである。しかしやがて文明が芽生えると、坩堝は穢れとして扱われるに至った。本編で虐げられる姿を目にする混種は、坩堝に触れた罰の存在であるとされている。
かつて原初の黄金樹を象徴した力は、いつしか罰せられるほどの「穢れ」と断じられたのだ。では、なぜ坩堝は黄金樹信仰の歴史の中で忌むべき諸相とされるようになったのか。坩堝が穢れに転じた理由を考察していく。
坩堝の穢れ
と、言ったものの。これについてはこれだ! という、明確な答えというものが見つかっていない。というより、複合的に様々な要因があって坩堝が忌避される存在とされるようになった可能性が高い。
大雑把に挙げてみるとこんな感じ。このどちらか、あるいはこの両方が関係していると個人的には考えている。まずは①の「原初の黄金樹という存在が黄金樹信仰にとって都合が悪いから」という点から。
坩堝の騎士は赤銅色で統一された独特の色の鎧を身にまとっているが、この赤色には由来がある。
オルドビスの大剣には、「原初の黄金は、より生命に近く故に赤味を帯びていた」とある。この原初の黄金というのは黄金樹のことだ。原初の黄金樹はより生命に近く赤味を帯びていた。そして恵みの雫を滴らせており、黄金樹は豊穣の時代を齎した。
黄金樹の時代、そのはじまりにおいて女王マリカは手ずから恩寵を与えたという。
そして、最初の王ゴッドフレイはその恩寵を堂々と、力強く受領した。しかしこの恵みの雫は、やがては尽きてしまった。豊穣の時代、けれどそれはごく短く。黄金樹は信仰になっていった。
つまり原初の黄金樹は恵みを齎す存在だったが、すぐに恵みが尽き、言ってしまえば民衆にとってはただの光るデカい樹になった。
坩堝の樹鎧の背中には原初の黄金樹の中心に卵のようなデザインが見られる。これは恵みの雫なのだろう。かつての黄金樹は豊穣を約束する存在だったが、今はそうではない。この変化は黄金樹信仰においては、黄金樹の陰りを表す確たる証拠なのである。
坩堝は原初の黄金樹を象徴する力であり、言い換えれば無くなったかつての恩寵を思い起こさせる存在である。ただの信仰となり果てた今の黄金樹にとって、かつての豊穣の時代を想起させる存在だから排除したいのではないだろうか。
次に②の「穢れを持って生まれた者が増えたから」という理由。
先ほど触れた混種は坩堝に触れた罰によって、生まれた存在だという。つまり現在の黄金樹信仰においては、かつて坩堝に触れた(その恵みを受領した)ことが原因で、混種という穢れ者が生まれたと信じられているということだ。
同じような存在で、かつ黄金樹信仰にとってさらに恥ずべき暗部とされたのが「忌み子」という存在だ。忌み子は黄金樹信仰の民の中で生まれた、醜い角や尾を持つ人間だ。彼らは呪われた存在であるという。
王都ローデイルにおいて忌み子は地下に捨てられ、永遠に幽閉される。それは王家に生まれた忌み子、モーグとモーゴットにおいても同様だ。穢れ者であるがあくまで奴隷として使役されることもある混種とは違い、忌み子は存在そのものが赦されていない。
これら忌み子には角や尾という、坩堝の諸相がある。黄金樹の民たちはこの諸相を見て、かつての民が坩堝に触れたからこそ、こうした者たちが生まれたのだと考えたのかもしれない。
忌み子の存在については影の地の先住民族である角人との関係も伺えるが……。あくまで本編の情報のみで考えるなら、黄金樹の民が坩堝を蔑んだ理由は、穢れ者の生まれがその由来の一つだと言えるだろう。
坩堝の騎士は文明以前にゴッドフレイを支えた精鋭たちであり、その力は信仰の対象だった。しかし文明が育ち原初の黄金樹が過去になり。坩堝が穢れを生むとされたとき、坩堝の騎士は追放された。もはや彼らの仕える王も、狭間にはいない。彼らは誰にも求められなくなったのだ。
16人だった坩堝の騎士
最初のエルデの王、ゴッドフレイに仕えた
16人の古い騎士たちの胴鎧
騎士オルドビスと、その部下たちのもの
原初の黄金樹、生命の坩堝の力を宿し
脈管がびっしりと浮き上がっている
(坩堝の斧鎧 Ver1.0.0テキスト)
坩堝の騎士は、Ver1.0.0では「16人の古い騎士」
と語られている。しかし後に初期のテキストから「16人」という記述が消されている。これは後述するが、DLCで登場した坩堝の騎士デボニアが関係しているのだろう。
ちなみにエルデンリング本編において、坩堝の騎士は16人いるのだろうか。数えてみよう。
嵐の封牢
ストームヴィル城
ノクローンの四鐘楼
赤獅子城
シーフラの水道橋に2人
アウレーザの英雄墓にオルドビスともう1人
タニスお付きの騎士
王都ローデイルに2人
根の底にシルリア
ファルム・アズラに2人
行き止まりの地下墓の霊喚びつむりが召喚する霊体が2人
実は数えるとピッタリ16人である。
(ただしこの場合、2人は故人ということになるが。)
DLCで登場したデボニアを合わせると17人になってしまうので、
テキストを修正することになったのだろう。
坩堝の騎士(めちゃカッコいい)のデザインを見てみよう。坩堝の騎士は前述した通り原初の黄金樹にあった
「赤味」を持っている。これは生命の色、血肉の赤だろう。
原初の黄金樹、生命の坩堝の力を宿し
脈管がびっしりと浮き上がっている。
(坩堝の斧鎧 Ver1.0.0 テキスト)
坩堝の鎧は原初の黄金樹を意匠として盛り込んでいるが、ここで注目したいのは旧テキストにある「脈管」という部分だ。黄金樹は植物として扱われるにも関わらず、坩堝の鎧においては脈管という、生物の中を流れる器官をモチーフとしている。もちろんこれは修正前のテキストではあるが、デザインは共通していると考えられる。
原初の黄金樹にまつわる力はオレンジ色に近い光のエフェクトで表現されている。これらはおそらく黄金樹の金(黄色)と、生命の赤の中心となる色なのだろう。
坩堝の斧兜の斧は、騎士オルドビスとその部下たちの象徴。斧はゴッドフレイの力の象徴だ。
大樹飾りは、騎士シルリアとその部下たちの象徴である。実は現在の黄金樹信仰にはあまり根のモチーフが見られない。これも原初の黄金樹の特徴なのかもしれない。
さて、坩堝の騎士は喋ることのないエネミーなのでその心中は現れる場所から想像するしかない。坩堝の騎士の中で一番意思を感じさせるのは火山館のタニスの側近の騎士だ。彼はプレイヤーがタニスを殺害すると敵対NPCとして侵入してくる。それまでは坩堝の騎士としては唯一、プレイヤーと敵対しない。この事から彼がタニスの騎士として、忠誠を誓っていたのは間違いないだろう。
また、他に背景を感じさせるのは赤獅子城の坩堝の騎士。坩堝に触れた罰とされる混種と、坩堝の騎士は似た背景を持つ同類である。その同類を守るために参戦したと考えると、坩堝の騎士たちにも自らと同類の境遇について、思うところがあるのだと想像できる。
こうした背景の見える騎士がいる一方で、追放されたはずのローデイルにいる騎士や、特に関わりのなさそうなファルム・アズラで獣人相手に大暴れしている騎士もいる。
また坩堝の騎士ではないものの、DLCでは坩堝の諸相を扱う黒騎士が登場している。彼らはまだゴッドフレイが健在だった時代に、聖戦のために影の地へ送られたのだろう。もしかしたらその時代にはすでに坩堝が忌避され始めていて、
追放の意味もあって坩堝を持つ騎士たちが聖戦へと送られたのかもしれない。そうだとすれば彼らの主であるメスメルとも、同じ境遇ということになる。
最古の坩堝の騎士デボニア
さて、ここからはDLCにて登場した、最古参の坩堝の騎士、デボニアを紹介する。ちなみにデボニアという名前はおそらく、地質時代の「デボン紀」という名称が由来だろう。他の坩堝の騎士としてオルドビス、シルリアがいるが、こちらもそれぞれオルドビス紀、シルル紀が由来と言われている。
ラウフの古遺跡で佇み、ただ遠くを眺めている坩堝の騎士デボニア。ボス扱いではない彼は、撃破して装備を入手
することによりその詳細をうかがい知ることができる。
デボニアは、坩堝の起源を追い求め、
一人黄金樹を旅立ったという。
このテキスト通り、デボニアは黄金樹を捨てた騎士だ。坩堝の起源を追うということは、自らや他の騎士が持つ
坩堝の諸相が何に由来することなのか、その答えを探しに来たのだろう。
坩堝の起源は「全ての坩堝のタリスマン」に答えがある。
かつて、巨人の身体に生じたものとされ、
塔の神話では、坩堝の母とも呼ばれている。
塔の神話が正しいのなら、巨人に生じた坩堝が全ての坩堝の諸相を持っており、それを指して坩堝の母と呼んだという。デボニアの探し求めた坩堝の起源は、坩堝の母だ。デボニアがその答えを見つけたのか、それとも見つけられなかったのか。それはわからない。
デボニアの装備を見てみよう。非常に特徴的な兜は、槌を模している。彼の武器も大槌だ。槌というモチーフは鍛冶を想起させる。その場合、金属をとかすのに使うつぼという意味での「坩堝」が関係しているのだろうか。
また、デボニアが起源を求めた影の地には伝統的な鍛冶文化がある。こちらから着想を得て槌を象ったのかもしれない。女神マリカと縁があり、エルデンリングを砕いたのも槌。それを直そうとするのも槌。黄金樹にまつわるものの行きつく先が「槌」であると考えるのも面白いだろう。
さて、デボニアと戦闘を行うと非常にユニークな坩堝の諸相を見せてくれる。デボニアが使用する諸相は二つ。一つ目が胸にミランダ(?)を生じて光の柱で攻撃する祈祷。これは非常にインパクトがあって……面白い!
と、花の諸相だけでも度肝を抜かれる見た目なのだが、もう一つの諸相はさらにド派手であり、デボニアの必殺技のような扱いとなっている。デボニアにいきなり馬のような下半身が生え、躍動感のある動きで褪せ人を翻弄する。
この諸相は祈祷・戦技として存在しないため便宜上ケンタウロスなどと呼ばれているが、この諸相のモチーフを考えてみるのも面白い。まずこの下半身は半分が金色、もう半分が暗い茶色。ライオンの前脚に、蹄のついた四肢がついているように見える。この6本脚という点が非常に特異である。
これは「ラマッス」という、古代アッシリアの人面獣身像ではないだろうか。ラマッスは知性を象徴する人間の頭部、
鳥の王たるワシの両翼、豊穣・富を象徴する牡牛の身体、そして牡牛の体でない場合はライオンの身体を持っているとされる。
ラマッスは正面から見ると前脚が2本、横から見ると脚は4本。計5本の足が同時に象られた彫像だ。これを前脚2本と後脚4本に分けて考えれば、デボニアの坩堝の諸相とよく似ていることがわかる。またラマッスは知恵、翼、豊穣、力、あらゆる生命の要素を内包した守護神であるとされる。6本脚という特異さにフォーカスするなら、ラマッスが一番近い。
全ての坩堝の起源を求めた、デボニアにこそ相応しい最後の諸相と呼ぶほかにないだろう。とはいえこの諸相には翼はないため、また別の存在と言えるかもしれない。翼のない半人半獅子で言えばウリディンム、あるいはウルマフルッルーという魔物が存在する。でも個人的にはラマッスを推しておく。やはり前脚2本、後脚4本という特異性ではラマッスが近いと思う。
さて、考察はこんなところだろうか。というわけで今回はここまで。おつかれさまです!